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2017.06.13/未分類
人々は古くから船を使って荷物を運んできました。港の側に街は栄え、たくさんの文明もそこで生まれてきました。燃料を使うことの無い帆船やいかだなどの時代から、現代では大きな石油タンカーやコンテナ船、LNG船やLPG船などの液化したガスを運ぶ船、自動車の運搬専用の船など、有形・無形、実に様々なものを運ぶための船が活躍しています。
今もなお廃ることの無い船での輸送。理論上では、船というものはどこまでも大きくできるそうで、まさに無限の可能性を秘めた輸送機器と言えるのではないでしょうか。そんな万能とも呼べる船での輸送にも、弱点と言えるものがいくつかあります。
一番の弱点と言ってもいいのが、時間がかかる事。車両での運搬や航空輸送などに比べ、船での輸送は緊急貨物に向いていません。もともとが速度の遅い輸送機器である上に、天候に左右されたり、港が他の船で混んでいて、到着してはいるのに、少し沖で他の船が荷下ろしをして再び出港するのを待っていなくてはならないこともざらにあります。
それから、決められた港や航路にしか行けないこと。まず船はどこにでもつけられるものではなく、港という受け入れる場所がなくてはいけません。その上、船というのは無限に大きくできるものだと言いましたが、そんな大きな船が通れる航路や、着岸できる港がどこにでもあるかと言うと、そうでもないのです。大きな船が着岸するには港の水深が深くないといせませんし、同じように十分な深さのある場所しか航行できず、幅の狭い海峡なども、大きな船が通ることは難しいのです。
そうは言うものの、航空輸送にしても、空港という受け入れられる港がなければ、飛行機は飛び立つこともできません。天候が悪くて離着陸できない点でも、船と同じと言っていいでしょう。それに船は、速度こそ遅いですが、重量と距離から換算した燃料の消費量やコストが、飛行機はもちろん、自動車や列車より格段に低いのです。エコノミー面でも、エコロジーの面でも、優秀な輸送手段なのです。
遅いけど安い。海上輸送の特徴を最も端的に言うと、そんな言葉になるでしょう。しかしながら何事にも例外は存在するもので、例えばコスト面。みかん箱くらいの大きさで、お米ひと袋(5kgとしましょう)分くらいの重さの荷物を送るとすれば、海上輸送よりも航空輸送の方が安く済む可能性が高いです。
カートンひとつならば混載貨物となるでしょうから、まずCFSチャージと言って、倉庫でコンテナに積み込んでもらう料金が掛かります。それからコンテナ船に積み込むにあたり、THC(ターミナルハンドリングチャージ)という、コンテナヤードでコンテナを船に積み込んでもらう作業料も掛かります。それらは海上運賃と同様に、容積に対して料金が換算される事がほとんどですが、例に挙げたみかん箱一つくらいならば、最低料金が適用されることでしょう(各社間の見積りによってもしかしたら例外もあるかもしれません)。
その他、1出荷(=1BL)に対し一定の料金がかかってくるDoc feeと呼ばれるものなどもあり、合わせて考えると、あまりに小さな貨物を海上輸送で運んでしまえば、わざわざ高い料金を払って、時間が掛かる輸送手段で運んでしまう羽目になります。
“そんなことしている企業なんてない”、と思われる方も多いでしょうが、実は意外と、商品の小型化や急な出荷量の減少があったにもかかわらず、以前からずっと海上でばかり出荷していて、あらかじめ航空輸送の見積りを取っていなかったから、ですとか、会期ごとに買い主や輸送代理店と見積りを取っているから、といった理由で、いきなり航空輸送に切り替えたりは出来ないと仰るところが結構あるんです。
航空の方がこれだけ安くなって、しかも出荷の翌日には着きますよ、なんてお伝えしてもすぐには替えられないのは、大きな企業様に多いような気もします。きっと出荷担当者の方の一存では、何事も決めるのが難しいからかもしれませんね。
他にも、海上輸送は遅い遅いと言えど、少し大きめのパレット貨物で、航空機のスペースがなかなか取れない時。中国などの近場で、例えば上海や香港、韓国の釜山くらいでしたら、日本を出港して3日もあれば到着しますから、必着のある緊急貨物でない限りは、海上輸送も手段として考えてみても良いと思います。出港や貨物搬入のカット日が合えば、なかなか取れないエアーのスペースを確保するより、意外と海上の方が早く、安く、輸送できる場合もあるでしょう。
今回は海上輸送に焦点を置き、その弱点や可能性をお話ししてみましたが、手段を限定しなければ、輸送の可能性はあなたが思っていたよりもっと、広がっているのかもしれません。