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2017.05.30/未分類
物流の発達を語る上で、梱包資材の進化は忘れてはならない大切なキーワードです。
とある物流企業が、TVCMで「運べないものはない」と言い切っているのに私は驚きを隠せませんでした。そう語っていたのは日本でもトップクラスの大手物流企業でしたが、中小の企業では、今まで運んだ経験のないものやあまり運んだことのないものをお客様から頼まれた時、かなり前から下準備をしたり、様々なところにお伺いを立てたり、或いは泣く泣くお客様に別の業者を当たって頂くようにお願いする羽目になる時もあるのです。そういった場面に遭遇してきたが故、「運べないものは無い」と言うCMを、「ホントに?!」という半信半疑な気持ちですとか、「やはり大手は違うな」という羨望の眼差しで見つめていたものでした。
確かに、それだけ大手はたくさんの知識や経験やネットワークもあるので、顧客のどんな要望にも応えうる”力”があります。しかし、輸送の技術やノウハウも勿論重要且つ不可欠ですが、不可能だった輸送が可能になった影には、梱包資材の進化が強く関わってきたことをご存知でしょうか。
運べないものが運べるようになった、というのとはまた違いますが、手始めに今日は、一番身近な梱包資材の進化のお話をしましょう。
宅配便で荷物を送る時によく使う、ダンボール。コンビニやスーパーで、余っているダンボール箱を無料で譲ってもらったことのある人もいるかと思います。軽い菓子類などが入っていたダンボール箱と違い、ペットボトル飲料の入っていたダンボール箱(カートン)は、固く破れにくくできていますよね。それは決してダンボールの素材が別物なのでなく、ダンボールが二重になった、”ダブルカートン”になっているからです。国内輸送は、飲料など中身が重いものでなければシングルカートンで流通できますが、輸出用梱包は基本このダブルカートンの箱が使用されます。中国などですと、未だシングルカートンでデリケートな商品を輸出しようとしてダメージが起きる、というのが結構起きていますが、日本の企業は大抵ダブルカートンの箱で輸出するところが多いです。
このダブルカートンも十分丈夫ですが、更にダンボールを3枚以上重ねた梱包資材があります。これが”トライウォール”という素材です。
何故そんなにダンボールにこだわったのか。丈夫さを求めるなら、従来からある木箱で十分じゃないか。そう思う人もいるかもしれません。しかし木箱は、虫がついてはいけないので燻蒸したりする必要があります。燻蒸の必要のない、合板素材の木箱もあります。ですが木材よりダンボールの方が、軽いのです。軽いと何が良いかというと、取り扱いが楽になるという面も多少あるかもしれませんが、何より良いのは、航空輸送で運んだ場合、運賃が安い事です。
航空輸送は、中身の商品を含めた貨物の総重量を元に運賃が計算されます。容積重量が総重量より重い、つまり、簡単に言うと”かさばる荷物”だった場合は、容積重量が運賃計算に適用されますが、基本的には総重量です。だから、軽い方が安く運べるのです。
木箱と比べて25-30%ほど軽いと言われているトライウォールですが、紙でできているのに水にも強い加工がなされています。なので航空輸送だけでなく、海上輸送にも適しています。
一度このトライウォールを実際触ってみたことがあるのですが、「コン、コン」という乾いた音がする、とても紙でできているなんて信じられないほど丈夫な資材でした。幅が2メートルもあるかと思われる大きな箱でしたが、中に重い機械を入れていても全くたわむこと無く、フォークリフトで運びやすいように下は下駄を履いていました(箱にスノコのような足が付いている事。)が、全体を支えるその足までトライウォールで出来ていて、なんだか感動しました。
トライウォールが生まれたのは1952年。アメリカでのことでした。もう随分昔です。最新の梱包資材と言うには少し年を取りすぎているかもしれませんが、開発された当初から、新時代の梱包資材として脚光を浴びました。しかしながら、その魅力はまだ未知数。未だに注目を集め続ける、可能性を秘めた梱包資材と言えるでしょう。