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2017.03.21/
船で貨物を輸送する際、一番一般的な方法が、コンテナに貨物を入れてから船に搭載して運送する方法です。
さて、このコンテナ。国際物流に関わることのない人であっても、おそらく皆さんがどこかで目にしたことがあると思います。港の近くなどで空のコンテナが山積みになっている所かもしれませんし、或いは実際にコンテナを積載した船を、港で見たことがある人もいらっしゃるかもしれません。生活圏がそういった場所の近くでなくとも、街中の少し大きめの道路で車がコンテナを引っ張って走る姿を見たことがある方は多いのではないでしょうか。
一見ただの鉄の箱のようにも見えますが、気密性にも優れているのです。例えば日本から香港、青島や上海などへの短い航路であっても、濃霧や雨風に晒され、潮風の中を通るのです。気密性が無ければ、中の荷物が何であれ、無事に港へ届けることなどできません。
コンテナは中の荷物が積み降ろされると、積み付けの時に貨物が中で動かないよう床に打たれた釘もきちんと抜かれ、きれいに清掃してから返却され、また出番が来れば船会社からきれいな状態で貸し出されます。しかし、そうやって繰り返し使われているがゆえ、貸し出されたものがたまたま汚れていることもあります。
ある日、空コンテナを引っ張ってきて、さあこれから貨物の積み込みをしよう、という時のこと。事務所のトランシーバーが鳴りました。バン詰め(パンニング)を行う現場と、そこに併設された事務所とは、トランシーバーで連絡を取り合っていました。事務所のトランシーバーが鳴ると、現場で何かイレギュラーがあった知らせ。事務所内がにわかにピリッとします。
「どうした、ダメージか?!」
と事務所の担当者が訊くと、
「違うんです!くさいんです、コンテナが!」
という答えが。どの程度の臭いなのか言葉だけでやり取りしても分からないので、その担当者は「くさい、・・・かぁ・・・。」とつぶやきながらおもむろにヘルメットを取り、現場用の装備をして該当のコンテナの所に確かめに向かいました。
“くさい”なんて言うと何だか面白おかしい感じがしますが、これがなかなかよく有り、結構深刻な問題なんです。中身に詰める商品が衣料品であれば匂いが付いてしまう可能性がありますし、食品だったりなんかしたら、もう最悪です。臭い匂いがする箱の食品が届けば、買い手はどう思うでしょう。コンテナは気密性があるがゆえに、付いてしまった匂いが抜けにくく、また、匂いが中にこもりやすいのです。
そんな時は別のきれいなコンテナと交換してもらうことも可能ですが、いくら航空貨物より緊急でない事が多い海上輸送の現場でも、日々さまざまな締め切り時間のある中で動いています。そのカット時間を逃そうものなら、輸送にとんでもない遅れが出てしまうのです。コンテナの返却・交換はタイムロスであり、また、ドレーを引っ張るために新たに段取りを組むのもコストがかかってきます。できればそんなことは避けたいところ。しかし、衣料品や食品以外にも匂いが付いて困るものは沢山ありますし、商品が何であれ、そこから異臭がすれば大きな問題になりかねません。
そんな時、苦肉の策でバン詰めギリギリまで掃除し直してコンテナの中を扇風機で風を通したりする時もあります。もちろん、お金が掛かろうが手間が掛かろうが、貨物を無事な姿で、約束した時間までに届ける事は必須なので、扇風機で臭いの問題が解消すると判断された時のみ、敢えて交換を行わず取られる手段ではありますが、輸送にも、限られた時間の中で如何にして無事に荷物を届けるか。さまざまな立場の人の、さまざまな努力や工夫がなされているのです。