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2017.08.01/
輸出総額1兆円――日本政府は2020年までに、日本産食品の輸出額を
年間1兆円規模にする、という目標を掲げています。
“ジャパンブランド”食品の輸出の拡大――、
現在多くの自治体でも地域の特産物を世界に向けて発信するため、
生産者や販売業者を支援しています。
農林水産省によると、食品の輸出は2013年から4年連続で増加し、
2016年の輸出実績は7,502億円。
今後ますます発展すること期待される食品の輸出には、
どんな注意が必要でしょうか?
2011年原発事故後の諸外国の輸入規制
2011年3月の福島第一原発の放射能汚染に伴い、
日本産の食品には諸外国・地域で輸入規制が講じられています。
国によりそれぞれ規制は異なりますが、
日本の特定の地域・特定の食品の輸入停止、
輸入時に産地証明や放射性物質検査証明書の提示と、
輸入検査の強化などが、主な措置になります。
しかし国の働きかけもあり、多くの国で規制が撤廃・緩和されつつある中、
一方では取り締まりが厳しくなっている国もあります。
日本の食品輸出相手国第3位、台湾です。
台湾の日本産食品輸入規制強化
2017年5月15日、台湾は日本産食品について輸入規制を強化しました。
輸入禁止地域(福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県)の食品が、
産地を偽って台湾内に流通し、実に283もの品目が回収されたとのことです。
台湾の日本産食品輸入規制措置の概要は以下の通りです。
・5県(福島・茨城・栃木・群馬・千葉)のすべての食品は輸入停止(酒類は除く)
・5県以外の地域は、都道府県を明記した産地証明を輸入通関時に提示(酒類は除く)
放射能性物質検査報告書の提示が義務付けられたもの
・岩手・宮城・東京・愛媛の水産物
・宮城・埼玉・東京の乳幼児用食品、乳製品、キャンディー、ビスケット、穀類調製品等
・東京・静岡・愛知・大阪の茶類産品
産地証明
台湾が要求する産地証明は、貨物の都道府県名が明記されたもの。
商工会議所、または各自治体の農林水産部で取得できます。
ただし、商工会議所の原産地証明書は基本的には「貨物の原産国を証明する」であり、
都道府県を記載するのは、台湾向けの特例とのことです。
REMARKS欄に最終加工地や、水揚げ地の都道府県名を記載します。
(水産物の水揚げ地を記載した原産地証明:商工会議所)
自治体も地域内で収穫・加工された食品につき産地証明を発行しますが、
水産物など自治体により対応が異なりますので、確認が必要です。
青果物などの検疫対象品目については、別途植物検疫証明書を提示するため、
産地証明書は不要。
食品の品質表示
食品には必ず中国語で品質・栄養を表記したラベルが義務付けられています。
表示方法ついては、台湾の食品安全衛生管理法で細かく規定されており、
誤りや不十分な点があると、輸入許可が下りないケースもあります。
表示内容
・食品の品名・原材料名・重量・添加物・台湾国内での販売者
・製造企業名・住所・原産国・製造年月日・有効期限・栄養表示*・アレルゲンなど
・ラベルの漢字の大きさは、原則として縦横2ミリ以上(サイズにより異なる場合あり)
*栄養表示にも詳細な規定があります。
食品表示については、農林水産省やJETROのホームページから、
確認することができます。
輸入検査
日本産の青果実や鮮魚が、台湾での輸入検査で不合格にケースがあります。
残留農薬基準値や、甲殻類などのカドミウムの基準値が日本とは異なることが
主な原因です。
http://www.maff.go.jp/pps/j/introduction/export/
食物検疫所のホームページより
台湾に限ったことではありませんが、食品を輸出する際は、
相手国の輸入者に現地の情報や状況をよく把握してもらいましょう。
日本産食品に対する諸外国の輸入規制は撤廃・緩和傾向にあるとはいえ、
輸入国の事情により規制が変われば、前回まで問題なく輸入できていた製品も
新たな資料の提出が必要になることがあります。
前もって、輸出する製品の規格書やデーターを輸入者に提示し、
相手先の食品輸入管理部門に確認してもらっておくなど、
事前のきめ細かな対策が必要です。