航空会社のサービスレベル

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航空会社のサービスレベル

2017.05.16/

キャビンアテンダントの授業を受ける学生。初心忘れるべからず、ですね。
(掲載元: 国際トラベル・ホテル・ブライダル専門学校 HPより)

 

ひと月ほど前でしょうか。ユナイテッド航空が乗客を引きずり降ろした事件を皮切りに、航空会社のサービスに関して今、世間の注目が高まっていますね。以来、同航空会社が少女がレギンスを履いていたことがドレスコードに反するとして搭乗を拒否したことが蒸し返されたり、アメリカン航空が母親からベビーカーを没収した騒ぎや、全日空の機内食がバナナ一本だけだったことなどなど・・・。メディアは次から次へと”不祥事”を吊るし上げ、その分情報を受け取る側の私たちも、最近は特に敏感になっているかもしれません。

 

ここでその数々のニュースの実態や各社の対応の是非を語ることはしませんが、今後の航空会社のサービスのランク付けに、報道が影を落とすことは想像に難くありません。しかし、その乗客サービスとは別に、貨物の取り扱いに関しても、各航空会社のサービスレベルがフライト選定に影響を及ぼしている事はご存知でしょうか。

 

航空貨物輸送代理店が混載を組むとき。あまりフライトを選べない程就航している便の少ない仕向先でなく、週に何本か日本から飛行機が飛んでいる様な、例えば中国各地の空港や、デイリー便がある香港や上海、シンガポールなどであれば、いくつかの混載便からフライトを荷主が選ぶことができます。基本的には早く着くものは値段が高く、少し時間がかかったり、経由便だったりすると値段が下がるので、貨物の緊急度合いを考慮してフライトが選ばれます。

 

グラウンドハンドリングの様子。チーム一丸となって迅速丁寧に作業を行います。
(掲載元: Aviation Wire 2014.03.04記事より)

 

でもフライトの早い遅いだけでなく、貨物の取り扱い方が雑な航空会社で混載を組むのはダメージやミッシングの原因となる可能性が高まるので、作業のクオリティーも鑑みて、輸送代理店はお客様に対しフライトプランを提案します。特にヨーロッパ各国やアフリカ大陸など遠方ともなると、色々なルートで仕向地に向かう方法があるので、数多あるフライトの中からその航空会社を選ぶのには、安心して貨物を託せることも大切な要素です。

 

以前、もう10年以上も前になるでしょうか。これもまたニュースで、小さな箱に入った貨物を航空会社のグラウンドハンドリングのスタッフが、遊んでいる様に放り投げながら取り扱っている姿が報道されました。前職がグラウンドハンドリングのスタッフだったと言う知人に、例えばfragile(ワレモノ)のラベルが貼ってある貨物はどんな風に扱われるか訊いてみたことがありました。すると、「ラベルを見たら気を付けるが、でも、”気をつける”程度」だと言う答えが返って来たので驚いてしまいました。私はてっきり、ワレモノはワレモノで分けて衝撃を吸収してくれる様な特別なコンテナに入れるだとか、そうでなくても他の貨物とは違ったひと手間を掛けられているものだと思っていたのです。

 

場所は変わって国内物流の現場では、ワレモノラベルが貼ってある貨物に対して、上に別の貨物を乗せないだとか、安定した場所に置きましょうだとか、個々の教育や現場職員たちの間での注意喚起が頻繁に行われています。最終的にはその”個々”に取り扱い品質の全てが委ねられるが故、企業はその個々人の意識を高める努力をしています。それがその会社のクオリティーとなるからです。

 

グラウンドハンドリングを行なっていた彼女も、恐らくそういった教育は受けていたでしょう。しかし、デリケートな貨物の取り扱いが特別なメソッドでなく、ひとりひとりの意識に委ねられているところが大きい様に感じたため、私の質問に「気をつける程度」と答えるに至ったのではないでしょうか。

 

飛び立つ旅客機に向かって手を振る作業員。
(掲載元: Aviation Wire 2016.03.04記事より)

 

ハンドキャリーの様に、託された人間が”自分の荷物”と思って大切に運ぶことができれば、その輸送企業はどんなに信頼してもらえるだろうか、と考える事が時々あります。街から街へ、人から人へ、手から手へ。そこに同じクオリティーを求めるのならば、確かな理念や確立された教育方法が必要です。伝言ゲームの様に始めと終わりで形が違ってしまっていては、企業への信頼度が変わってきます。

 

今般の報道の数々も、その会社の皆が皆、同じ理想や信念を抱いていたのなら、こんな事は起こらなかったのではないでしょうか。同じ考えの人間ばかりが必要とは思いませんが、一番大切な「お客様の立場に立って考えてみる」と言うことを、忙しいさ中も、それぞれが忘れずにいられたら事態は変わっていたのではないかと思うのです。


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