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2017.08.20/
貿易書類―ミスをしてはいけない理由
モノの輸出には、出荷から代金回収までに、さまざまな関連書類が付随します。
基本のINVOICE・PACKING LIST・船荷証券(B/L)から、
取引内容や物品によって、原産地証明、商品の規格書、安全データシート、
貨物の海上保険証券、それに銀行に提出する為替手形など、
多くの書類が要求されることもあります。
書類はモノの流れとともに、様々な人の目に触れ、国境を渡る大切なものです。
書類上の些末なミスで、相手国での輸入が許可が下りないことや、
代金の回収までに時間を要すること、最悪不払いのリスクなど、
大きなトラブルに繋がってしまうこともあるのです。
『輸出における書類と情報および貨物の流れ』
https://www.jetro.go.jp/theme/export/basic/trading/procedure.html
輸出した貨物が相手国の輸入通関を通らず、すべて没収されたことがありました。
理由は貨物の中の1アイテムの数量が、
書類(InvoiceとPacking List)の記載数量より多かったためです。
相手国で開催される展示会用のサンプルの出荷でした。
もちろん数量に関しては、出荷先の担当者と取り決めていましたが、
肝心の荷物を出荷する現場とのコンセンサスが取れていなかったのです。
梱包用の箱に空きスペースがあり、サンプルだから大目に入れてあげよう、
という親切心から多めに入れてしまったようです。
展示会までに日程的に猶予がなく、再度の輸出はできませんでした。
サンプルなしで展示会に臨まなければならないところでしたが、
初出荷の商品だったため、万が一のことを考えて、
2ロットに分けて出荷していたため、なんとか展示会を乗り切ることができました。
これは書類上のミスではありませんが、
書類と現物の数量の相違で失敗した例です。
また、船荷証券(B/L)は、貨物の所有権を表す最も重要な書類です。
輸出者の船積依頼書(S/I)をもとに、船会社がB/Lを作成します。
信用状(L/C)取引では、L/Cの条件に相違ないB/Lのオリジナルが必須です。
もしB/Lに間違いがあった場合は、輸出者はL/G(保証書)を船会社に差し入れ、
訂正料を払って、B/Lを訂正してもらいます。
船会社によっては訂正処理に時間がかかることもありますし、
また間違いに気づくタイミングが遅く、本船が相手国に入港している場合、
相手国のルールによりペナルティがかかる場合もあります。
このようにB/Lの訂正には、余計な労力と時間と費用がかかってしまうのです。
さらに三国間貿易の場合は、輸出者―仲介者―輸入者と、
ひとつのB/Lが3つの国を行き来します。
http://b.pasona.co.jp/boueki/word/4191/
もしL/Cでの取引をした場合、B/Lは輸入者から仲介者に開いたL/Cと、
仲介者から輸出者に開いたL/C、2つのL/C条件と一致していなければなりません。
3か国の銀行を通じたやり取りの途中で、書類の間違いに気がついても、
L/CやB/Lをアメンドするのが時間的に難しく、実際には不可能なこともあります。
http://www.korea-info.org/key-1.html
ミスをしてはいけない―しかし、人はついミスをしてしまうものですよね。
ミスをして、初めてその処置の方法も学ぶことができる、とも言えます。
貨物の工場出荷前、通関前、船積み前、現地到着前、
できるだけ早いタイミングでミスに気づけば、それだけ修正もしやすく、
リスクを減らすこともできるので、出荷中の案件があれば、
常に気に留めておくことが大切です。